2023年11月に富谷市ビジネス交流ベース「荷宿」を会場に開催された「脱炭素まちづくりカレッジ」は、ゲーム形式で脱炭素を学ぶユニークな手法の勉強会。ゲームとはいえリアルな設定で、「脱炭素なまちづくり」に挑戦するというもの。参加者は誰もが疑似体験に熱中し、理解が大いに深まったと大好評でした。今回は、その勉強会のファシリテーターを務めた川田マキコさんにお話をうかがってみました。
脱炭素を自分の問題として分かりやすく学ぶ機会に
キャリアコンサルタントや産業カウンセラーの資格を持ち、大学での非常勤講師、自治体や企業での研修講師を務める川田さん。一昨年にカードゲーム型研修プログラムのライセンスを取得し、研修に取り入れてきました。今回、富谷で実施した「脱炭素まちづくりカレッジ」もその研修プログラムの一つです。
“脱炭素”は、川田さんが仕事を通してSDGsの普及に取り組んできた中で、特に力を注ぐテーマの一つ。「脱炭素とか、カーボンニュートラルとか、言葉は知っているけど、詳しくは分からないという人も『自分ごと』として考えるきっかけになる」と、川田さんは参加を呼びかけています。
-
参加者は学生や会社員、団体職員などさまざま。皆さん興味津々のようす。
-
ゲームのポイントは3つ。簡単そうに見えてやってみると分かる難しさ!
参加者が役割をもらって協働でチャレンジ
はたしてプレイヤーは目標達成できるか!?
今回の「脱炭素まちづくりカレッジ」は、大学生を中心とした起業意識が高い方々のコミュニティで実施。金融機関やメーカーなどの会社員、地域おこし協力隊、大学教授、行政職員など、バラエティに富んだ顔ぶれです。殆どの方がゲーム型研修プログラムは初体験とあって、興味津々のようすです。
はじめに川田さんから、気候変動の実態などの分かりやすい説明があり、いよいよゲーム開始です。
参加者は、行政、金融機関、民間企業などそれぞれの立場を持つ地域のプレイヤーになります。そして仮想の街全体で、温室効果ガス排出量を半分にすることを目標とし、さまざまなプロジェクトの実現にチャレンジしていきます。
プレイヤーには「資金」、「人材」、「挑戦できるプロジェクト」のカードがランダムに配布され、その手持ちのアイテムを有効活用しながら、温室効果ガス排出量削減に挑みます。
中には、大幅削減につながるプロジェクトばかりでなく、逆に増えてしまうもの(トラップ)もあるので要注意です。
-
ゲームで使うカードアイテム。予算額や事業内容、人材などがカードに表示されています。これらのカードからどのプロジェクトに挑戦するか作戦を練ります。
ゲーム世界での未来体験に思わず戦慄!?
体験から生まれた実感が理解を深めていく
序盤は参加者同士が初対面ということもあり、やや遠慮がちに周囲の様子をうかがっていました。しかし、徐々に会場のあちらこちらで相談や交渉を持ち掛ける声が聞こえ始め、会場全体が活気づいていきました。交渉が成立したグループから手持ちの資金や人材を使って、次々にプロジェクトを実行していきます。
チャレンジは4ターンに分けて行われます。毎ターン終了時に、各プレイヤーの温室効果ガス削減量の発表があり、削減量に応じて資金や挑戦できるプロジェクトが増えたりします。ターン終了時には、ゲームに合わせて作られたニュースも流れてきます。これには、みんなビックリ!このままでいくと未来はどんな世界になるか、動画でリアリティたっぷりに表現されています。「大変だ、何とかしないと!」という焦燥感にも似た雰囲気が会場に生まれます。
プレイヤーは時間内に一つでも効果的なプロジェクトを実行し、温室効果ガスを削減しようと、交渉に懸命です。交渉が進むにつれ、プレイヤー間の情報を全体で共有できるようになり、明らかにまち全体として「脱炭素」を進めていこうという機運が高まってきました。
ゲーム終了を迎えたときには「あー!終わっちゃった!」という声が、あちらこちらであがっていました。
-
カードを見せ合って相談するプレイヤー。経過とともに会場に一体感が生まれていく。
-
実施するプロジェクトと使用する資金や人材などのアイテムを登録するとスクリーンの排出量などが増減。
脱炭素のカギを握るのは「個」の意識
先進地の富谷から各地に波及させたい
終了後に参加者に感想を伺ってみると「ある程度知識は持っていたつもりだが、ゲームでの実践体験でその知識が一つに繋がり腹落ちした」「脱炭素に対する意識が変わった」と効果を絶賛。
他にも「やりたいプロジェクトはあるのに、人材や資金が不足しているためできないことが多く、ゲームとはいえ現実的で、歯がゆかった」、「待っているだけでは、何もできない。自分から動いて、ほかの地域プレイヤーと協力していくことは、現実でも全く同じだと改めて感じた」、「自分だけ脱炭素の取組を進めていても、全体でゼロカーボンを達成できないとダメ。自分ができることをしながら、周りと協調していく姿勢が大事だと感じた」など、次々に熱意のこもった感想を聞くことができました。
川田さんが「脱炭素まちづくりカレッジ」を開催する目的は、「個」の意識を変えていくことだそうで、その点で狙い通りと言える結果になりました。
川田さんは「脱炭素はSDGsの中でも際立って緊急性が高い課題なのに、まだ充分に意識に浸透していない」と感じているそうです。確かに地球規模の課題を自分の課題として捉えるところまで、なかなか結び付きづらいところがあります。「脱炭素まちづくりカレッジ」には、そのギャップを埋める効果があると感じます。
「年代を問わず『脱炭素って何だろう?』『カーボンニュートラル、言葉は聞くけどよくわからない』という方に是非、ご参加いただきたいです。『脱炭素まちづくりカレッジ』を体験いただくことでさまざまな学びや気づきが得られると思います。」と言葉を重ねる川田さん。
-
取り組み状況が表示されているスクリーン。なかなか減らない排出量にため息が。
-
排出量50以下を達成できたのは、まちづくり会社だけという結果になりました。
川田さんが「脱炭素まちづくりカレッジ」開催で目指すのは、脱炭素の土壌づくり。
「個としても取り組むし、企業としても取り組むし、行政としても取り組んでいただく。その必要性を、リアルに疑似体験できるのがこの『脱炭素まちづくりカレッジ』。このプログラムを一人でも多くの方に体験していただくことで、みんなで土壌を築いていくような地域づくりに貢献したい」と瞳を輝かせます。
富谷市も行政として、ゲームの設定と同様に、「2050年までに温室効果ガス排出量半減」を目指していますが、真の意味でゼロカーボンシティを達成するには、市民の皆様や民間企業の方などの協力が不可欠です。ぜひ身近な「デコ活」から取り組んでいただき、環境にやさしい富谷市を実現していきましょう。
※「脱炭素まちづくりカレッジ」に興味がある方は、川田さんにご相談ください。
特に体験型の研修を希望される方やゼロカーボン学習(中学生以上)にお薦めです。
●連絡先
一般社団法人マジカル・ステップ 川田マキコ
https://www.magical-step.com/
Mail:info@magical-step.com