地域に密着したメーカーとして建築資材の小売から始まり、現在は住宅建設も行う、創業64年の株式会社 北洲。住宅事業、リフォーム事業、建設・資材事 業すべてにおいて、時流に淘汰されずに愛され続ける「本物」こそが、お客様を幸福にすると信じ、数十年先の未来を見据えて研究開発を進めています。
1993年、北洲は(財)住宅・建設省エネルギー機構が募った「第1回省エネルギー住宅賞」の最高賞「建設大臣賞」を受賞。次世代に向けた低炭素社会の 構築を目指し、全国各地の低炭素な活動を表彰する「低炭素杯2015」では北洲の取り組み「37年に渡る寒冷地での省エネ木造住宅の普及」が「LIXIL最優秀家庭エコ活動賞」を受賞するなど、先進性に優れた住まいづくりが高く評価されています。
地域と共に歩み続ける北洲を率いて、常に新たな発想で挑戦する、代表取締役社長 村上ひろみさんにお話をお聞きしました。
省エネ性能が五つ星と評価される北洲ハウジング
家庭でのエネルギー消費のうち約30%が冷暖房エネルギーとされています。省エネ住宅は、このエネルギー消費量をできるだけ抑えることを目指した住まいを指し、住宅のエネルギー消費性能レベルを客観的に証明する制度が
「BELS(“Building-Housing Energy-effisiency Labering System”の略)」。 これは一般社団法人 住宅性能評価・表示協会により運用される「建築物の省エネ性能(燃費)について評価・認定する制度」です。
「BELSは、第三者機関による評価も可能なので信頼性が高い点も特徴です。一次エネルギー消費量を元にして、住宅性能を分かりやすく5段階で表示し、 弊社の住宅事業(北洲ハウジング)の場合、標準で最高の★★★★★表示となっています」と村上さん。省エネ住宅をつくるには「断熱」「気密」「換気」の3つのポイントがあるといいます。そのメリットは、光熱費が削減できる、温度差が身体に大きなストレスを与えるヒートショックを防ぐことができる、アレルギーの原因となるダニやカビが発生しにくくなって健康に良い、などが挙げられます。
「2022年の戸建における樹脂サッシの普及率は25%ほどに増加しました。実はアルミサッシよりも断熱性の高い樹脂サッシを本州で最初に標準仕様として採り入れたのは弊社なんです。1985 年に導入し、その4 年後にはカナダから技術者を招いて、世界最高水準と考えられる省エネルギー住宅を完成させました。ただ、当時は私たちの取り組みはいくら何でも大袈裟じゃないか、と思われる方もいたことは事実。Too Much じゃないかと。しかし、私たちが最も重視したのは、家族が健康で快適に過ごせることでした。その結果が北洲の省エネ住宅なのです」。その家で暮らす人々のことを最優先に考え追求した家を作りたいという、北洲の想いを教えてくれました。
家全体をしっかり断熱することで、温度ムラのない居住空間が実現できます。自由な間取りや快適な暮らしにとって、断熱は重要なポイントに。
北洲基準とパッシブ設計で高気密・高断熱の家づくり
家族が健康で快適に暮らせるよう、独自に定めた家づくりの基準「北洲基準」を設けている北洲。基準の概要は次の通りです。
(1) 健康…室内の上下温度差3℃以内にします。冬の寝室温度は快眠できる18℃前後に調節。居室ごとの温度差は 5℃以内とし、住む人や建物自体の負担を減らします。
(2) 快適…不快な気流感のない輻射式暖房で室温22℃の暖房設計。空気を直接暖めるのではなく、面(床・壁)を暖め、体感温度で暖かさが感じられるようにします。
(3) エネルギー…暖房エネルギー消費量を改正省エネ基準の1/4 以下を目指します。
(4) 経済性…コストのバランスを考慮して資材を選定。メンテナンス及びランニングコスト削減を図ります。
「ところで『パッシブデザイン』という言葉をご存知ですか?自然エネルギーを最大限に活用し、『夏は涼しく、冬は暖かい』快適な生活を送ることができるんです」。村上さんによると、北洲のパッシブデザインは極めて独創的だと言います。「住む人が健康で快適な暮らしを実現するために大切な3つの熱(断熱・遮熱・蓄熱)をコントロールするという考え方が、日本の建築でスタンダードになることを目指しています。まず家全体をしっかり断熱すると、温度ムラのない居住空間ができます。断熱化で限りなくワンルームに近い空間をつくることができ、家族のコミュニケーションを育む間取りも実現可能に。内装の塗り壁材を蓄熱するものにすれば、夏も冬も屋内の温度変化が緩やかになり、エアコンの稼働時間と設置台数を減らすことができます」。
また、北洲の住まいは高気密・高断熱なので、冷暖房効率が非常に良く、余計な光熱費がかかりません。住宅内の温度ムラも少なく抑えられるため、健康に良い点もメリットの一つです。注文住宅全棟でパッシブデザインを本格的に展開する北洲は、「命と健康を守る」断熱リフォームも推進しています。住宅診断(インスペクション)を行うことで、既存建物の状態を数値化し、適切な断熱改修を提案。温度差のない暖かい住まいの普及を目指し、リフォームにより断熱改修する割合が2022年度末までに2019年比300%となるよう目標を掲げています。
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自然エネルギーを活用するパッシブデザインは、健康・快適と省エネを実現する設計手法。木製窓は断熱性に加えてデザインも優れています。
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北洲が技術の粋を結集したプレミアムパッシブハウス(2017年建設)。日本の住まいを省エネ=健康・快適にしたいという想いが込められた理想のカタチです。
ゼロエネルギー住宅に「健康と快適」をプラス
近年「ゼロエネルギー住宅」という言葉も耳にするようになりました。一次エネルギー消費量(冷暖房・照明・給湯・換気など)の収支がゼロになることを目指した住宅のことで「家で消費される電力よりも、創り出される電力の方が多い(もしくは同じ)住宅」と言えます。“net Zero Energy House”を略して ZEH(ゼッチ)とも呼ばれ、環境省・国土交通省・経済産業省の3省が連携して、 国を挙げてZEHの推進に取り組んでいます。
ZEHを実現するために必要なポイントは「高断熱」「省エネ」「創エネ」の 3 つ。「創エネの場合、一般的に太陽光発電システムを取り入れるものと考えられがちです。弊社は太陽光を採り入れる取り組みを長年にわたり行い、断熱だけでなく日射を効率良く活用することで、より良い暮らし提案ができると考えています。蓄電池を備えれば、災害時に停電した場合の備えにもなります」と村上さん。ZEHにも独自のこだわりがあるそうです。「長く住めば住むほど、お客様のメリットが大きいZEHですが、北洲はそこに『健康・快適』をプラスしました。北洲基準を満たすだけでなく、長く安心して住むためのサステナブル耐震(※)、年月と共に味わいの増す外観デザインを設計に盛り込み提案します。エネルギーの自給自足だけでなく、快適で家族の笑顔がずっと続く、それが北洲の『健康・ 快適』ZEHなのです」。
(※)繰り返しの地震に強さを発揮する北洲の耐震仕様。建物の揺れを抑える制震システムも採り入れている。
2020年竣工の北上本店社屋では、太陽光発電の直流給電システムを試験的に導入。オフグリッド住宅(電気の自給自足)を目指す研究・開発を進めている。
独自の情報や技術を地域工務店と共有し、地域と共に歩む
住まいづくりに関して、村上さんにはもう一つの持論があります。「私たちが研究開発した商材から最新情報まで、地域工務店の皆さまに発信し共有することもまた、私たちの務めだと考えています。“地域が一丸となってより良い未来を目指す。皆で頑張りましょう!”というのが私の想いです」。今後、より一層 SDGsや脱炭素社会への取り組みを深め、お客様に生涯上質で豊かな暮らしをお届けすべく、先進的な住まいづくりを追求し続けていく意気込みが、村上さんのお言葉からも伝わってきました。
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住まいの本質は「家族が健康で快適に暮らせること」。その実現を目指し、北洲はいつも新しい挑戦を掲げ、未知のフィールドに踏み出し、有機的に進化し続けていきます。