仙台・宮城圏域を中心に、新築戸建住宅の設計・施工や建売住宅の販売、展示場の運営などを行っている株式会社あいホーム。建築木材の専門店を前身とし、60年以上にわたって地域の人々とともに歩み続けてきた会社は、カーボンニュートラルの時代に求められる「ZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の普及に努め、消費エネルギーの削減と、住民にとって住みよい家づくりの両立を追求してきました。今回は、エコなだけではない、消費者目線に立った提案を続ける会社としての想いについて、代表取締役の伊藤さんにお話を伺いました。
省エネと創エネでゼロカーボンを実現!
ZEHがもたらした住宅業界の変革
2008年頃から「新しい省エネの形」としてアメリカで注目されるようになったZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)が日本で取り上げられるようになったのは、2014年に閣議決定した「エネルギー基本計画」がきっかけでした。
ZEHとは、住宅の性能や構造、設備を改良して省エネを実現し、同時に太陽光発電システムなどを取り入れ創エネすることにより、使用する年間一時エネルギー消費量を正味ゼロ以下とする住宅のことをいいます。政府によって標準的な新築住宅を2030年までにZEHとする目標が掲げられ、従来の「省エネルギー基準」よりもさらに厳しい「ZEH基準」が新たに設けられたことで、2016年頃から住宅メーカーの多くが取り入れるようになりました。あいホームがZEH基準を満たしたモデルハウスの展示を始めたのもちょうどその頃のこと。しかしそれは、住む人にとってのメリットを思えば必然的なことだったと伊藤さんは考えています。「寒い冬や暑い夏を乗り切ろうとするとどうしても冷暖房費がかさみますよね。ZEHは断熱性能が高いので室内を快適な温度・湿度に保ちやすく、エアコンを使わなくても過ごせる期間が増えるので、従来の住宅よりも少ない電力での生活が可能になります」。実際、ZEHで家を建てたお客さまやあいホームの社員からは、「夏でもエアコンを使わず過ごせる」「冬はあたたかくて快適」といった声が上がっているそうです。
企業や工場だけではなく、一つひとつの家庭でも太陽光発電を取り入れるといった消費エネルギーを抑える努力が必要だと語る伊藤さん。これまでは「省エネ性能が高い」といっても具体的な数値があるわけではなく、一般の消費者は価格でしか判断できなかったそうですが、ZEHはUA値を示すことができるので、住宅の性能を比較しやすくなったといいます。
[UA値とは?]
住宅の内部から床・外壁・屋根・その他開口部などを通して外部に逃げる熱量を外皮全体で平均化した値のこと。熱は高いところから低いところへ流れる性質があるため、冬は内部から外部へ熱が逃げ、夏は外部から内部へ熱が入ってくる。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネ性能が高いといえる。
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ZEHの認定基準のひとつとして、強化外皮基準UA値が地域ごとに定められている。
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「暮らしやすい家づくりを追い求めた結果、“環境にやさしい家づくり”になっていた」と、やや謙遜気味に語ってくれた伊藤さん。
「ZEH基準」を家づくりの「当たり前」にしていきたい
「暮らしやすい家づくりを追い求めた結果、“環境にやさしい家づくり”になっていた」とやや謙遜気味に語ってくれた伊藤さんですが、2021年に富谷市が「ゼロカーボンシティ」を宣言したことで、お客さまの意識はもちろん、企業全体の意識も変わってきていると実感しているそう。「ZEHを手掛けるようになったことで一般的な住宅でも構造や使用する素材など意識するようになり、全体的なブラッシュアップにつながりました」。導入当初はZEHに懐疑的だった社員たちが、自宅をZEHで建てたりお客さまの評価を聞いたりするうちに徐々に受け入れてくれるようになったのも、伊藤さんにとってうれしい変化でした。
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現在、あいホームでは県内4つの店舗でZEHのモデルハウスを展示している。
一方、ZEHはどうしても金額が上がりがちになってしまうという問題もあり、「省エネや環境配慮型の住宅に興味はあるのになかなか手が出せない」と断念せざるをえないお客さまも少なくありません。そこであいホームでは、手頃な価格でZEHを提供しようと新たに「ゼロエネルギーの家」の販売を開始。今では新築戸建の受託数のうち、ZEHが占める割合は約40%にまで達するといいます。「将来的な目標は受注する住宅のすべてをZEHにすること。お客さま自身が環境を意識することはもちろん大事なことですが、環境のことを考えたZEHを私たちが“当たり前の性能”として提供できれば、お客さまが環境について意識していなくても結果として環境配慮につながる。そういう自然なサイクルができることが理想ですね」。
環境に配慮した企業として社員全員が誇りを持てるように
エネルギー消費を抑えるためには、提供する住宅の性能をZEH基準にするだけではなく、社員一人ひとりがそのことに誇りを持って仕事に打ち込める環境を作ることも重要だと考えている伊藤さん。社内業務におけるDXを推進し、会議をオンラインにすることで移動時に排出される二酸化炭素を削減したり、ペーパーレス化を推奨したりと、細かなところから始めているそう。その中で大きな取り組みの一つが、あいホームが行っている企業活動のすべてを、自社が所有する太陽光発電所で発電した再生可能エネルギーを使用していること。「社員の多くは、自分が使っている電気がどこからきているか知らないと思います」と茶目っ気たっぷりに笑って見せた伊藤さんですが、そうした謙虚ながらも確かな成果につながっていくという自信が、その笑顔から垣間見ることができました。
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管理者から借りた使われていない土地を活用し、県内70か所以上にminiソーラーを設置。
「環境に配慮した家造りも、環境に配慮した働き方の促進も、やらないよりはやった方がいい。その小さな積み重ねや変化が少しずつ地域に広がり、長期的に見て住みよい街をつくっていく。その一助となる取り組みを、今後も引き続き行っていきたいと思います」。