設立から13年を迎えた、東北初のフードバンク団体「ふうどばんく東北AGAIN」。企業や農家、各家庭などから、まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物を頂き、支援が必要な人に無償で提供するフードバンク/フードドライブをはじめ、ひとり親世帯を対象に食べ物や生活雑貨を届けるフードパントリーなど、幅広い活動に取り組んでいます。
まちの人々と協力し合いながら困っている人をサポートし、さらに食品ロス削減やゼロカーボンも目指しているふうどばんく東北AGAINの理事・富樫さんに、活動の様子をお伺いしました。
※撮影のためマスクを外している写真がございます
地域全体で協力し合い、
食品ロス削減とゼロカーボンの実現を目指す!
ふうどばんく東北AGAINは、東北初のフードバンク団体として2008年11月から活動しています。設立当初は「フードバンク=困っている人が行く場所」というイメージが強かったこともあり、ふうどばんく東北AGAINの存在もあまり地域に浸透していなかったと、理事の富樫さんは言います。「2018年頃から大規模なマルシェを開催したり、親子で楽しめるワークショップを開いたりして、地域の人たちにとってAGAINが親しみやすい場所となるよう心掛けました」。
努力が実り、最近では学校や企業などから「フードバンクに協力したい」という声も増えました。特に企業からは非常用の備蓄品を入れ替える時期に、水やアルファ米などをt単位で提供頂くことも。「余った食べ物は捨てると、ごみとして燃やされて二酸化炭素が排出されてしまいます。食品ロス削減は、ゼロカーボンにもつながる素敵な活動なんです」。地域全体で協力し合い、より良いまちづくりにもつなげていきたいと話します。「現在は富谷市と共同で市内の3ヵ所にフードドライブのボックスを設置し、市民の皆さんから、家庭で余っている食べ物を提供頂いています。頂いた物は、福祉施設や養護施設、学童などへ届けているんですよ」。
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富谷市内にフードドライブを設置。「住みたくなるまち富谷」が将来にわたって続くことを目指す。
新型コロナウイルス感染症の影響で、「明日食べる物がない」という深刻な家庭が増えたと話す富樫さん。「以前は年間24tほどを支援していましたが、コロナが流行し始めてから2020年度は97t、2021年度は170tもの支援物資が必要となりました」。
水と米を渡すだけでは"支援“とは呼べません。例えばおかずなど、すぐに食べられる物が必要なため、足りない物は買い足して、困っている人々へ渡していたと言うから驚きです。「AGAINの活動は、皆さんの協力がなければ成り立ちません。実は私達も一度、資金不足で事務所を閉めなければならないところまで追い詰められていました」。本来は支援する側のAGAINが困っている状況を、メディアが取り上げてくれたことをきっかけに、応援してくれる人が増えてどうにか活動を続けられたのだと、支えてくれた人々の優しさを思い返しながら教えてくれました。
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富谷市役所内のフードドライブに、食べ物を持ってきてくれる市民の皆さん。
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農家の方からはよく、形や大きさが不揃いなため店では売れない、規格外野菜を頂く。
子ども達の大きな可能性が、明るい未来を切り拓く!
ふうどばんく東北AGAINでは、困っている人々の支援を行いながら食品ロスを減らし、ゼロカーボンにもつなげるために、フードバンク以外の様々な活動にも取り組んでいます。
例えば、子ども食堂。県内にはまだ、困っている子どもがいるのに子ども食堂がない地域もあります。「子ども食堂は“子どもしか行けない場所”“貧しい人が行く場所”ではないんです。本来は子どもだけではなく、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんやお母さんも、みんなで子どもを見守る、公園のような場所なんですよ。そういう、地域の憩いの場を、県内に広めていきたいと考えています」。富樫さんは、市町村と連携を取りながら、子どもにとってかけがえのない居場所を作っていきたいと意気込みたっぷりです。
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県内の子ども食堂同士をつなぐ「みやぎこども食堂ネットワーク」。ネットワークを活用すれば、余っている食べ物の情報などを、各子ども食堂がすぐにキャッチできる。
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みやぎこども食堂ネットワークを県内へ広め、子ども食堂同士の絆も深めたいと話す富樫さん。
また月に一回、フードドライブで頂いた食べ物などを箱に詰めて家庭へ届けたり、ひとり親世帯へ弁当を配達したりする”フードパントリー”も実施しています。先月配布した弁当は、約300食。弁当を手渡す時に「最近どう?」と声がけをするなど、コミュニケーションを大切にしていると教えてくれました。
「子どもたちやシニア世代に向けて出前講座も行っています。特に、子どもの頃から食品ロスを減らすことが大切だと伝えることで、未来のゼロカーボンにもつながるのではないかと考えています」。出前講座の後、子ども達が学校にフードドライブのボックスを置き、食べ物集めに協力してくれた時はとても感動したと、富樫さんは微笑みます。「子ども達の、自分で考える力・行動力には驚かされます」。近い将来、食品ロス削減もゼロカーボンも達成できるのではないかと、子ども達の可能性に期待を込めます。
一人ひとりの力を合わせ、より良い未来のまちをつくる!
「皆さんのサポートがあるからこそ、このように様々な支援を行うことができるんです」。ふうどばんく東北AGAINの活動の中で、毎日食べ物の回収、賞味期限のチェック、物品の仕分け、弁当作り、箱詰め作業などを行っている、約30名のボランティアスタッフ達。この他にも、イベント開催時は富谷市の郵便局から「会場の設営に人手は何人必要ですか? 100人位までなら職員を集められますよ」という、心強い申し出を頂いたこともあるそうです。「私達の活動は、心ある方々の気持ちに支えられているんです」と微笑む富樫さんは、一人ひとりが自分達にできる方法で助けてくれていると教えてくれました。「食べ物の提供以外にも例えば、お米屋さんが倉庫の一角を無償で貸してくださったり、観光バス会社の方がたくさんの食べ物の配達を手伝ってくださったり、という具合です。この地域は雪が深いので、事務所の前を雪かきしてくださった企業さんもいらっしゃいます」。
みんなの力を合わせて、子育て支援や困窮者支援に取り組むことは、社会全体を良くする事にもつながります。「社会全体がより良くなれば、子ども達にとってもより住みやすいまちになります。これからも富谷市やまちの皆さんと一緒に、困っている方々の支援を通して、食品ロス削減もゼロカーボンの達成も目指せる、より良い社会を作っていきたいと考えています」と、目を輝かせながら、将来の明るい展望について話してくれました。
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会場設営を手伝ってくれた、富谷市の郵便局員の皆さん。
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頂いた食べ物の仕分けを行うボランティアスタッフ達。