2022年度、富谷高校では2学年が「持続可能な地域づくり」をテーマに、自治体や団体の再生可能エネルギーやSDGsへの取り組みを学ぶ研修ツアーを実施しています。その一環として8月25日(木)に、みやぎ生協コープ富谷・共同購入物流センターを訪問。「水素サプライチェーン」施設を見学するなど、身近なところで行われている温暖化ガス排出を削減する様々な取り組みの実態と、未来に向けての可能性などを学びました。
みやぎ生協の物流センターの「水素サプライチェーン」施設を見学
富谷高校の学生が訪れた共同購入物流センターには、富谷市、日立製作所、丸紅、みやぎ生協が共同で実証実験を行った地産地消型の「水素サプライチェーン」施設があります。次世代のエネルギー資源として注目されている「水素」を地域内に供給する施設で、学生たちも興味を持って見学しました。
みやぎ生協の担当者から分かりやすく説明された「水素サプライチェーン」の仕組みは以下の通り。
まず、屋上に設置された太陽光発電の電力を使って、水電解装置で水から水素を取り出します。取り出した水素は低圧・安全で運搬性に優れた「水素吸蔵合金カセット」に充填。このカセットはみやぎ生協の配送車で他の配達品とともに、市内の生協の一部店舗や教育施設に配送。電気や熱エネルギーとして活用されます。
一般に水素は高圧で圧縮して運びますが、この場合高圧ガス保安法に基づく資格や免許が必要となります。その点水素吸蔵合金を活用した輸送であれば、水素は常温常圧下で安定しており、資格や免許も必要ないというメリットがあります。
説明を受けた高校生からは、「地元富谷市にこんな施設があることを知らなかった」「水素エネルギーをカセットに貯められることがすごい」という声があがっていました。
この共同購入物流センターには、さらに水素と廃油を使って発電する新設備も導入されています。センターでつくる水素と、生協の一部店舗から集めた廃油をろ過して一定の割合で混ぜ、ディーゼルエンジン発電機で40キロワットの電気を起こすというもので、全国的に例のない試み。水素の活用で燃焼効率が高まり、二酸化炭素の排出を抑えるなどの効果も期待できるため、次世代の発電システムとして期待されています。
多角的に展開される「みやぎ生協の環境への取り組み」を学習
後半は会議室に戻って、プロジェクターを使ってわかりやすく地球温暖化の問題点や、その課題解決に向けてみやぎ生協で取り組んでいる環境事業について学びました。
みやぎ生協では、地球温暖化の主要因である脱炭素の取り組みとして『2030年までに2013年度比でCO2排出量65%削減』目標を設定し、省エネ機器、再生可能エネルギー、バイオディーゼル燃料(BDF)などの普及拡大により、生協事業におけるCO₂の総量削減を目指しています。
2013年度の総排出量62,150トンから、2021年度は55.0%(34,182トン)以下に削減するという目標を掲げましたが、累計30.08%(18,696トン、▲43,463トン)と目標を大きく超えて達成しています。
目標を達成した要因として挙げられるのが、14店舗を東北電力CO₂排出ゼロの電気に切り替えたこと。さらに、最新型の冷凍冷蔵設備に更新したり、店舗で照明、空調温度、冷蔵・冷凍ショーケース温度の基準を設定し遵守する取り組みを行ったことが挙げられます。今後は、削減目標の上方修正も視野に入れ、再エネ100%電力の導入拡大を進めていく方針だといいます。
さらに、再生可能エネルギー発電も自らの事業として実施。津軽バイオマスエナジー 平川発電所〈青森県平川市〉、野田バイオマス発電所〈岩手県九戸郡田村〉、コープ東北 羽川風力発電所〈秋田県由利本荘市〉など10の再生可能エネルギー発電所を運営しています。
また、バイオディーゼル燃料(BDF)にも力を入れていて、家庭などから出た天ぷら油などの廃油を回収し、資源化業者がバイオディーゼル燃料(BDF)に精製し、宅配の車両やごみ収集車などの燃料に利用しています。
「身近なところでCO₂の削減の取り組みが行われていることと知って、勉強になりました」と、富谷高校の学生も、地域全体で行われるゼロカーボンへの取り組みの必要性や可能性を実感できたようです。